不条理。この不気味な社会。

実社会で、組織のなかで、いやおうなしに管理されながら、すごしていると、カフカの小説『城』やカミュの小説『異邦人』などと、まったくおなじ不気味さを感じることがおおい。

なにが不気味かって、みんなこの不気味さに気づいているのか、気づいていないのか、そこがよくわからないところだ。

管理社会の不条理をしったうえで、「わたしたちは、個人個人の人間のがんばりをみている」などと、できもしないことをいっているのか?もしそうだとすると、かれらだって不条理をどうすることもできないのだと、情状酌量の余地ありとして、あきらめてあげることもできるが。

反対に、もしかれらが、無自覚に、それをやっているのだとしたら、これほど不気味なことはない。

人間をくいものにしていることを自覚せずに、二枚舌をつかっていて、自分らだけは、あまい蜜をすすっているのだとしたら、かれらは人間ではなく、化物のたぐいではないか。

契約更新時に、「君のがんばりはみとめている」といっておき、またべつの日には、「君の仕事は評価にあたいしない。だれでも、がんばればできることだ」と、おなじ人間の口からでてくるのだ。

人間の皮をかぶった化物じゃないか。なんて不気味なんだろう。

城 (新潮文庫)

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異邦人 (新潮文庫)

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