ラウンジで水商売の女性ふたりとお酒をのんだ話~昼の世界と夜の世界~

ラウンジで、お酒をのんだ話をする。

昨晩は気がつけば泥酔していた。しかし、今朝お酒はほとんどのこっていない。あたまもいたくない。

仕事おわりに、地元にある居酒屋で、いつものように、ひとりでのんでいたけれど、よくのんだ。朝になって、レシートをみると、瓶ビール3本にハイボール2杯とあるので、ひとりでよくやるなあと、ややあきれる。

帰宅するため、フラフラと南の方へむかって、あるいていたら、わかく、はなやかな女性がふたり、道ばたにたっていた。

キャッチだろうとおもったけれど、表情やたたずまいなどの雰囲気に、オッとおもわせるものがあったので、しゃべってみたいという興味がわいた。

ほとんど泥酔していたので、冷静な判断ができない気がしていて、しかもひとりでいて、そんなときに、法外な金額を請求されたら、かなわへんとおもい、一瞬ためらった。

しかし、そのふたりの女性からは、人間的ななにかが、内側からひかっているように、第一印象でおもえたので、しゃべってみて、そのこたえあわせをしたいという衝動にかられた。

というわけで、こちらから、逆にキャッチされにいった。ふたりに、「こんなところで、なんのひとまちですか?」と変なことばをなげかけた。

余談だけど、こんなところとは、地元をさしており、どうして、大阪のミナミなどからは、やや辺境に位置する場所に、につかわしくない魅力をひめた人間がいるのだろう?という意味がこめられている。

話をもどす。

声をかけたら、やっぱりキャッチだった。そして、はじめの会話のやりとりだけで、やっぱり、はなした感じがここちよかった。

きけば、お店のシステムは、まず席料が5000円で、ボトル代として6000円、ここからスタートだという。こわいひとがでてこられたら、こまるとおもって、相当なやんだけれど、結局いくことにきめた。が、財布には10000円しか、はいっていなかったので、ちょっとばかし交渉して、おためし価格として、ボトル代なしで、10000円を上限に、ということになった。話の前後が逆になるけれど、こわいひとは、最後まで、お店からはでてこなかった。

ふたりに案内されて、店にはいった。

店内は、わかい女性だけで、きりもりされていて、路上でであったふたりをいれて、計4人。そのあと、0時すぎに、もうひとりあらわれた。

ぼくが店にはいったとき、先客の男性がひとりだけいた。年齢は40歳前後くらいだろうか。50歳ちかいかもしれない。店内はうすぐらくて、乱視のひどいぼくには、正確にはみえなかった。

席について、はじめのふたりの女性と一時間ほど、しゃべった。いろいろしゃべったが、直観にくるいはなく、ふたりの女性は非常に聡明で、人間に芯がしっかりあって、彼女らが声にだしたことばの振動は、聴き手の心身を共振させた。

会話について、話の内容のおもしろさではなく、声にだすことばの振動で、たがいの心身を共鳴させることが、ひとつのたのしみかたとして、成立するとおもうけれど、この場では、それができているとおもった。

なにをはなしたかというと、たいしたことは、はなしておらず、だいたい「こんなことを感じている」とか、「こんなことをかんがえている」とか、日常の他愛のない話ばかりだ。他愛のない話でも、心身が躍動していた。

こういうものを、うまくいえないけれど、スポーツみたいな会話とでもいってみても、よいだろうか。

スポーツみたいな会話とはちがい、話の内容の会話で、おもしろかったのは、この店を分類すると「ラウンジ」ということで、「ガールズバー」とか、「キャバクラ」などとは、似て非なるものだということだ。 

女性がおしゃべりで、もてなしてくれるという類似点だけで、うっかりおなじものとおもっていたけれど、全然ちがうようだ。お店のシステムなどのちがいだけでなく、そこにいる人間の意識のありかたが、まず全然ちがうということが、ふたりの話から、はっきりと理解できた。

Wikipediaでしらべてみたけれど、なるほど、たしかに、まったくちがうものだ。それぞれに、それぞれのよさがあるようだ。

ラウンジ (接待飲食店) - Wikipedia

ふたりの女性のうち、ひとりが「昼の仕事にもどりたい気もするけれど、この夜の仕事がたのしいので、こっちの方があっているのかもしれない」といっていたのが、印象にのこっている。

ドラクエには、昼と夜とを自由に逆転させることができる、ラナルータという呪文がある。この呪文をつかうことができればよいのにと空想するけれど、そんなわけにはいかないので、せめて、昼の世界と夜の世界とを統合する空間をつくることができればよいとおもう。

たぶん、さがせば、ラナルータな場はあるのだろうけれど、出不精で、ひっこみ思案で、行動的ではないぼくは、まだそういう場をみつけることができていない。

ぼくの意識としては、日常、夜の顔をして昼の世界ですごし、昼の顔をして夜の世界ですごしているつもりなのだけど、これがなかなか理解されずにいて、しんどい。特に、昼の世界の人間からは、ほとんど理解されていない。

ぼくは、この半分かけた感じのしんどさを夜の世界のひとびとには、補完してもらえている気がするので、夜の世界の人間に、けっこう愛着があるのだ。むろん、夜の世界とは、女性に接待してもらうような形態のお店だけをさすのではなく、ふつうの居酒屋や、マスターの串カツ屋もふくんでいる。

つね日ごろから、夜の世界が、昼の世界を補完するという位置にあまんじているというのは、ちょっとちがう気がしている。

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