居酒屋でタバコ。
くわえタバコをしながら、オッサンがはいってきた。席はカウンターしか、あいておらず、そのオッサンは、ぼくのとなりの席に案内された。そのオッサンの手もとのタバコをみると、フィルターぎりぎりくらいまで、すっている。
ぼくはタバコの煙が、うっとうしかったので、おもわず手であおいで、煙をはらった。オッサンは、気がつくタイプのひとなのか、ぼくのその身ぶりに気がついた。
「ああ、ここ、タバコあかんか。兄ちゃん、ごめん、ごめん、タバコすいながら、はいってきて、行儀のわるいお客やな、わし。」と、そのオッサンがいった。
こんなことをいわれたら、煙を手ではらったことが、なんだかもうしわけない気がしてきた。ここは禁煙の店でも、禁煙席でも、ないのだ。「いやいや、ちょっと煙で鼻がくすぐったかっただけです。どうぞ灰皿。」と、おもわずこたえてしまい、目のまえにあった灰皿をさしだしてしまった。
なんだか、自分はすごく嫌なやつだなあとおもった。オッサンは、気分を害したんちゃうやろうかな。
・・・
が、しかし、煙を手ではらったことは、よくやったとおもう。不快だったので、そういう意思をしめしたのは、これは成長だ。そして、それをうけて、オッサンのぼくへの配慮があって、そのオッサンの配慮に対して、タバコをすうてくださいと灰皿をさしだしたのも、よいことだとおもう。
このオッサンとぼくとのやりとりは、けっこう高度なことやとおもうけれど、どうだろう。