ひとが癒えていくこと。そういうことにかかわる仕事。

去年1年かかわった学生に、リストカットだらけで、自殺をこころみたことがあるというひとがいた。そいつの顔は、やたらくらく、陰があり、しばらくいっしょにすごしているだけで、魔界にひきずりこまれそうなほどのネガティブなエネルギーがあった。ぎこちなく、ひきつりながら、わらった顔には、魔のちからがあるんじゃないかとおもうほどだった。


ひとりでは、到底たちうちできなかったので、ある程度関係をきずいてから、専門家(スクールカウンセラー)のところへ、つれていった。それからは、徐々に、専門家が中心にかかわっていくようにして、ぼくは、すこし距離をとるようにした。


先日、半年ぶりに、そいつとあった。専門家からは、まえもって、ずいぶんとよくなったときいていたが、ほんとうに、みちがえていた。うっかり他人かとおもうくらい、雰囲気があかるくなっていた。


魔の雰囲気は、表情から、きえていた。全然学校にこれなかったのに、その日は1時間まえから、悠長にマスクもせずに、やってきた。他人のそらにか?と、多少とまどっているぼくをみて、自分から、「おひさしぶりです」と、声をかけてきた。


そいつが、"ふつう"に、わらっている顔をみて、うれしさがこみあげてきて、感動した。それとともに、すこし、くやしかった。これほど、ひとをおどろかせるほど、人間がかわるすがたをみせつけられて、嫉妬したのである。


ぼくは、このような仕事をお金にしようとはおもっていない。しかし、この仕事を評価しない学校は、おわっているとおもっている。そういうところに、未来はないだろう。