河合隼雄の『大人の友情』という本をよみおわった。やっぱり河合隼雄って、よい。おもしろかった。
友情というものは、シンプルには、かたることができないものだということが、よくわかった。無意識からの影響をうけるし、たったひとことのことばによって崩壊することもあるし、相手との距離感の変化からも影響をうける。ほかにも、いろんな影響をうける。また、ときに、裏切るより他はないということさえ、おこりうる。
このとおり、HOW TO的にできることではないので、どうやって友情を感じられるほどの友人をつくることができるか?ということは、本書をよんでも、あまりよくわからなかった。ただ、感触としては、鈴木大拙的な「無分別の分別」であること、無心であることをこころがけておれば、つまり、人間関係のなかで、こころがゆれたとき、いつも自分という存在の中心にいることをこころがけておれば、それぞれの関係性に応じて、友情をはぐくんでいく、よりよきはたらきが、できるのではないかとおもった。
そうあるためには、なによりも、「個人として、自立していること」がたいせつだと、あらためておもった。71ページにかかれていることばが、印象的だったので、引用しておく。
「人間として一人立ちしているということは、孤立しているのではない。~中略~自立している人は、適切な依存ができてそのことをよく認識している人である、~中略~。このことは、あらゆる人間関係において言えることだが、友人関係の場合もこのとおりで、互いに依存したり依存されたりしつつ、そのことの認識の深さによってその自立性も高まるのだろう。」
自立性のたかさは、相互に依存関係があることの"認識の深さによる"としているところが、特に、なるほどとおもった。
カバーの絵は、安野光雅の絵である。このひとの絵は、絵本をかおうか、まよったことがあるくらいには、すきである。
- 作者:河合 隼雄
- 発売日: 2008/02/07
- メディア: 文庫